78 今年読んで面白かったやつら
少女革命ウテナ
本じゃないじゃん!いいだろ!メディアなんだから!メディアは読み物なんだから!
今年最も大きな僕の感情の一つです。ウテナ。
関係性の暴力で重いストレートを顔面にラッシュしてくるアニメ。
これを観てから自分が「関係性」に着目するタイプの読み手だったという事に気づいた。或いは、これを観終わった瞬間から「『今まで関係性に着目して読んでいた』という事にすり替わった」のかも。青い鳥。
イリヤの空、UFOの夏
えっ、今更!?いえいえ、再読です。やっぱりいいなぁ、と思ったので。こういう場合に既読のブックを挙げるのってどうなの?いいだろ!初めて読んだのは中学生の時で、2,3年に一回のペースで読み返してきました。これからは毎年読み返したいです。
今回の再読で特に良かったのは『その3』の『無銭飲食列伝』です。これはマジで良い。女の感情と胃袋の話。
今年は長年行方不明だった秋山瑞人先生がカクヨムにて生存報告をしたことでも話題になりましたね。滝本竜彦とか瀬戸口廉也とかゼロ年代の書き手が次々と生存報告をしてくれて私は嬉しゅうございます。
SWAN SONG
エロゲーじゃん。いいんです。テキストだから。
去年、『電気サーカス』に触れてから瀬戸口廉也(唐辺葉介)の持つ周波数は、僕によく馴染むようだな、と感じていたけれど、その期待を全く裏切らなかった。
最終的な主題はカラマーゾフや遠藤周作の『沈黙』式の「なんで神様は今すぐ助けてくれないねん!ケチ!」みたいな話になっていくわけだけれども、そこに至るまでの過程が本当に丁寧かつ、プリミティブな勢いもあってLOVE。
「分かりあえない他者」を描くために、低機能自閉症の女の子を登場させて、さらに彼女にバラバラに砕け散ったキリスト像を修復させる意味を悟った時、瀬戸口廉也という人のまなざしに感謝と尊敬が溢れ出した。この物語に会えて本当に良かった。
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ちょくちょく割引きセールをやっているので優秀なオタクは定期的にチェックするように。
ハーモニー
今更!?これは本当に今更です。今年初めて読みました。
元々ハクスリーの『素晴らしい新世界』が好きなので、フォロワーから「早く読め」と言われていました。
はい、良かったです。
『素晴らしい新世界』と違ってキャラ文芸的文脈を用いて書かれているので、なんだかあたたかみ(炎上ワード)がある感じ。
テーマ的には作中で明示されている通り、『素晴らしい新世界』のリフレイン的側面もあるのだけれど、なんていうか、あたたかみがある……(炎上ワード)。
トァンの一人称で書かれているという点が大きいんでしょうね、やっぱり。あと、『素晴らしい新世界』と違って僕達読者はトァンキァンミァハの少女時代をトァンの一人称を通して知った上でアレを読まされるわけですよね……。
ハァーーーーーーッ。許さねぇ、伊藤計劃。俺にあまり美しいものを読ますな。俺を殺すことになる。生かしもするが……。
我もまたアルカディアにあり
ハーモニーと同じユートピア(ディストピア)小説。この手の「ユートピア転じてディストピア」みたいな物語ってなんて呼べばいいのかしらん?
何不自由無い核シェルターで弛緩した日常を生きる人々の短編集。
良いね……。僕はSF小説としての良さはもちろんあるけど、それを置いて取り敢えずエモさについて語りたい。
放射能汚染された大地を裸でバイクに跨り爆走する女の子が出てくる。以上。
他にも面白いとこいっぱいあるけど、ベスト・オブ・エモエモ大賞なこのシーンだけ紹介しとけばいいだろ。
キリスト教入門
矢内原忠雄のやつ。「キリスト教は人間の力を信じてない」みたいな話がすごく腑に落ちた。ほら、日本人って(炎上ワード)、人間の力を信じているきらいがあるじゃない?科学よりも宗教よりも。人間教みたいなとこがサ。
こういうエモくないエビデンス集めがめんどい話はやめやめ!とにかく、キリスト教がどういう信仰なのかを簡単に知るにはとっても良い本でした。
前述の『SWAN SONG』でキリスト教を扱ってたから、勉強してみよっかなぁという次第で。
今カラマーゾフも読んでるけど、特にこの本に対する信頼は揺らいでないから、多分概ね正しいと思われる。(俺が揺らぎに気づけないバカだったらダメだけどね!そりゃ俺自身にはわからん!)
儒教とは何か
日本人の宗教に関連して。
例えば日本人は無宗教に見えるけれど、かなり「親孝行」みたいな宗教はちゃんと幅を効かせてる。そのルーツは儒教の先祖崇拝にあるんだぜ。だから「親孝行」じゃなくて「先祖孝行』なんだぜ。みたいな話が書いてる。
皆さんも日々感じておられるであろう「日本人の宗教観の欺瞞」からスタートして儒教の解説をしてくれるので、非常にスムーズに儒教の世界に入っていける。
倫理道徳としての儒教よりも、中国の原始宗教を体系化した宗教としての儒教を解説しているので、「儒教は実は宗教なんだぜっ」と友達に自慢できる。
ソラニン
物語で一番大切なのって、物語の後の物語、ポスト物語だと思うんですよね。
僕達の人生には所々でカタルシス的な何かがたまーにあったりするわけだけれども、その後も人生は、世界は、ずっとずっと続いていくわけじゃない?
だから僕は、『幽遊白書』の最後のテキトーな感じとか、大好きなわけです。今思いだそうとしても、よく思い出せない、あの感じが大好きなわけです。
ソラニンってそういう話だったと思うんですよね。この新装版は特に。
去年のやつ。
来年は発売日に買ったのにまだ読んでない滝本竜彦『ライト・ノベル』とか、読み終わらない『カラマーゾフの兄弟』とか、瀬戸口廉也がシナリオ書いてる、来年発売のADV『MUSICA!』とか読みたいです。はい。