キィの日記

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『どうしようもない僕に天使が降りてきた』の「僕」ってかっこよすぎないか

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槇原敬之の『どうしようもない僕に天使が降りてきた』、という曲をご存知だろうか。

元カノの目覚まし時計を使っていただけで癇癪を起こし、時計や枕を破壊するヒス女と付き合ってしまった、かわいそうな「僕」の歌である。

この「僕」ってかっこよすぎないか?

前述したとおり、この歌に出てくる彼女(君)はどうしようもないヒス女な訳だけれど、それに対する「僕」のリアクションが聖人のように穏やかなのだ。

今日はそんな「僕」と「君」について歌の頭から解説していこう。

夜中に枕を引き裂くヤベー女

勢い良く閉まったドアで

舞い上がった枕の羽

 こんな書き出しから『どうしようもない僕に天使が降りてきた』は始まる。

「枕の羽」とはもちろん枕の中に入っている羽毛のことであろう。

枕の中身が飛び出るほどの力が枕に加わったらしい。

今夜はついに彼女を

怒らせてしまった

 どうやら怒っているのは「彼女」の方であるらしい。

となると、枕を引き裂いて中身をむき出しにしたのも彼女の方であると推測できる。

枕を引き裂くと、このようになる。

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相当な力を加えなければこれは無理だろう。もしくは刃物を振り回したのかもしれない。

それだけの強い感情表現をしたという事は、彼女の怒鳴り声も相当なものだったのではないだろうか。

つまり彼女は、夜中に、枕の中身が飛び出るほどの攻撃性を示す、ヤベー女、ということになる。

開幕からして不穏だ。

余程、「僕」は酷いことをしたのだろうか。次の歌詞を見てみよう。

昔の恋人のくれた
目覚まし時計を
何度言われてもずっと
使ったのが気に入らない

 僕(キィ)としては「そんな事で!?」と思ってしまうし、実際「僕」も元カノが忘れられないとかそんな深刻な理由でもなんでもなく、「まだ使えるのにもったいない」という軽い気持ちの為にずっと使っているのだろう。

だから彼女に何度も「元カノの目覚まし時計使わないで」と言われても「へいへい」と聞き流していたのだろう。

しかし、そういう積み重ねがついに彼女の不安のスタンプカードをゴールまで押してしまった。

彼女は妖怪「夜中に枕の中身が飛び出るほどの攻撃性を示すヤベー女」と化して枕を破壊して出ていってしまう。

事の重大さをすぐに悟った「僕」

この「僕」のすごいところはここから。次の歌詞を見てみよう。

飛び出した彼女の手の中で
チクタク まるで時限爆弾
近くの空き地に違いない
今すぐ 追いかけよう

 どうやら彼女は目覚まし時計を持って出ていってしまったようで。

僕(キィ)だったら「どうせしばらくしたら帰って来るだろう」と時間に解決を任せてしまうだろうな。

でもこの「僕」は違う。

逃げる彼女が抱える目覚まし時計を時限爆弾に例え、「この問題は一刻を争う」と認識し、対策を講じる。

「彼女」を手の平の上で転がすが如く全てを理解している超人「僕」

走る君の髪で シャツで
揺れるたくさんの白い羽根
いっぱい道路に落ちてる
"本当は探してほしい"

 案の定、空き地への道には彼女の破壊した枕の羽が落ちていました。「僕」の予想は当たった訳で。

そして道路に散らばった羽から「僕」は彼女のメッセージに気づく。

"本当は探してほしい"

わざわざ掃除が面倒な枕を破壊したのは偶然ではなく、意図的なものだったのだ。

服にくっついて、色んな場所に散らばる羽毛があれば、きっと「僕」は「君」を見つけてくれるに違いない。そう彼女は考えたのだ。

そんな事しなくても「僕」は「近くの空き地に違いない」と推理出来る程、彼女を理解しているのだけれど、彼女としては本当に見つけてくれるか不安で、羽毛をばら撒いたのだろう。

「僕」は全てを理解して彼女を追いながら、このように思う。

走る僕の髪で シャツで
揺れるたくさんの白い羽根
君はきっと どうしようもない
僕に降りてきた天使

 これまでの歌詞を考えると、どう考えても、客観的に見て「どうしようもない」のはヒス女の方なのだが、「僕」は「どうしようも無いのは僕の方だ。僕が君を見つけられるように、羽毛で場所を教えてくれる君は天使のようだ」と聖人を通り越してヤベー比喩を使い始めるわけで。

まるでキリストの如く彼女の全てを許し、あろうことか自分の方が懺悔してしまう「僕」はちょっとヤバイかもしれない。

この「僕」の懺悔で1番は終わる。

かなり進んでいた「僕」と「君」

付き合ってもうすぐ1年で
ずいぶん仲良くなったから
キスしたって 抱きしめたって
挨拶みたいに思ってた

「キスしたって 抱きしめたって 挨拶みたいに思ってた」って…

実質セックスやないかーい!

性の喜びを知りやがって!お前許さんぞ!
性の喜びを知りやがって自分たちばっかし、俺にもさせろよ!グギィィィ!…セックス…

それだけ親密な仲だった2人なのに「僕」は「君」にこう言われてしまう。

やっぱり空き地で見つけた
君はなんだか他人みたいに
僕におじぎをしてみせた
"愛を勘違いしないでください"って

 "愛を勘違いしないでください"って、なんのこっちゃい。

ちゃんと空き地に辿り着いただけでは「僕」に満足出来ず、他人行儀に「僕」をあしらう「君」。

マジでめんどくせぇ。強欲すぎるだろ。

君が両手をそらに上げて
目覚まし時計は飛んでいった
まるで誰かを見送るように
そっと微笑んで

「君」は元カノに「あばよ、クソッタレ」とでも言うような表情で元カノの目覚まし時計を放り投げてしまう。

よっぽど「僕」の事が大好きで、元カノが憎くてしょうがないのだろう。

まだ君の髪で シャツで
揺れるたくさんの白い羽根
壊れた目覚ましよりもっと
痛かった君の気持ち

 そんなヤンデレ彼女を「僕」はブッダの如き懐で受け止める。

まだ揺れている枕の羽毛。そこまで激しく羽毛が散るぐらい、枕を破壊する程、「君」は目覚まし時計の事を重く考えていたんだね、と「僕」は理解しました。エスパーかな?

「悪戯」で済ます懐の深さ

 

時々天使は僕らに
悪戯をして教えるよ
誰かを愛するためには
もっと努力が必要

 当然、この「天使」=「君」なわけで。

これだけのサイコじみた破壊行動を前にしても、「僕」は「悪戯」として受け止める。完全にヤバイ。

そんでもってまたもや「君」に対して「僕がもっと頑張らなくちゃ!」と懺悔と反省の念を抱く。

「僕」ってDV被害に遭いやすい奴では…。

聖人「僕」が「君」に最後に放った一言

帰ったら部屋の掃除は
僕が全部やるから
一緒に帰ろう…

 満点どころか無量大数点あげたいよね。

元カノの目覚まし時計を「元カノから貰った物だよ」と何らかの方法でバラしてしまう天然バカな「僕」もおかしいけれど、それ以上に「君」の破壊行動はヤベーわけで。

そんな「君」の破壊行動に一切文句を言わず、むしろ反省し、「羽毛でメチャクチャになった部屋は僕が全部掃除するから、一緒に帰ろう?」なんて言える人間は地上に存在するのだろうか?いやいないだろう。

この歌はタイトル通り「キリストと天使の痴話喧嘩」なのかもしれない。