80 君は教室の片隅で黒猫の絵を書いていた。
僕達がまだ中学生だった頃、君は教室の片隅で黒猫の絵を描いていた。
ノートに黒猫の絵を描いていた。
俺妹の黒猫の絵を。
君は黒猫の瞳をよく描いていた。
緋色に輝く瞳を描いていた。
君は黒猫の瞳に夢中だった。
やがて彼女は恋をした。
好きな男のところへ行ってしまった。
黒猫は五更瑠璃になった。
緋色の瞳はカラコンで出来ていた。
君の恋は終わったのだ。
それでも君は黒猫の瞳に夢中だった。
やがて彼女の恋も終わった。
預言書は引き裂かれてしまった。
その頃僕達は別々の高校にいた。
あの時も君は彼女の瞳を描いていたのか?
君は今、あの瞳を描けるかい。