キィの日記

趣味のお話とか

82 使い切った後のリップクリームは軽かった。

 医薬部外品、4グラム。緑色のパッケージをしたロート製薬のリップクリーム。僕はコイツをつい昨日使い切ったので、今日ドラッグストアで新しいのを買ってきた。

 僕がリップクリームを買い換えるという経験は、これが初めてであった。ずぼらな僕は最近になるまでリップクリームなるものを殆ど使うことが無かったのだ。冬、乾燥して唇が割れたら、割れっぱなしだったのだ。

 そして今日、新しいリップクリームの封を切り、古いリップクリームをゴミ箱へ放り込もうとしたその時である。

 軽い。明らかに軽い。

 たかだか4グラムの微妙な差を、僕の肉体は確かに感じ取って、訴えてきた。この4グラムを感じ取ることの出来る人間の肉体に甚く感動すると共に、リップクリームが天寿を全うするというという事は、まさにこの軽さに他ならないと僕は理解したのだ。

 火葬した後、亡骸を持ち上げる気持ちは、或いはこういうものなのかもしれない。