キィの日記

趣味のお話とか

73 聖なる盾、拾ったエロ本、ラベル

 金曜日はシャワーをしないで眠った。早朝のバイトから帰った後、大学をサボってハースストーンの酒場の喧嘩をひたすらやっていた。いつの間にか夜になっていた。僕は喧嘩をクリアする事が出来ないでいた。聖なる盾を貼りまくる敵がどうしても倒せないのだ。

 12時を回ったところで、頭にきたのでパソコンを閉じた。ゲームを辞めると、途端に酷く部屋が冷え込んでいることに気がついた。どうして今まで気づかなかったのだろう。急に体中が不快を訴えてきた。僕は布団に潜った。とても気怠く、シャワーを浴びる気になれなかった。

 歯を磨いていないことを思い出した。僕にとって、シャワーを浴びずに寝ることは百歩譲って良しとしても、歯を磨かずに寝ることは酷く恐ろしく、許せないことだ。扉で仕切られた先にあるバスルーム兼キッチンは、僕の部屋以上に冷え込んでいる。それを知っていても尚、僕はキッチンへ行き歯を磨かなくてならなかった。

 歯を磨いてから、寝た。

 

 土曜日の朝。8時半。勝手に目が覚める。二度寝する気にもなれないので、スマホでネットサーフィンをする。YouTubeを開くと、違法にアップロードされていた旧ハンターハンターのアニメがおすすめに上がっていたので、誘惑に負けて見る。拾ったエロ本を見つけた奴はヒーローだった、みたいな話が未だ美談として通るのに、アニメを違法視聴するのは絶望的にダサい行いみたいになってて不思議だ。僕はダサいやつだと思われたくないので、こういうダサいことは誰も見てないようなとこで書く。例えば、こことか。あーでも、この一言のためにバズったりするのだろうか。困るなあ、それは。取り敢えず、『拾ったエロ本』文脈をダサいこととして喧伝するところから、始めなくてはいけないよね。違法アップロードのアレコレは。(こういう「倫理問題にちゃんと関心ありますヨ」というアピールをしとく僕の小賢しさよ)

 違法にアップロードされたアニメには英語とかスペイン語とか、よくわからない字幕がついてる。僕が見たハンターハンターには英語の字幕がついていた。英語は多少読めるから、「ここはこうやって訳すんだ」なんて楽しみ方が出来るから嬉しい。色んな言葉を読めるようになったら楽しいだろうな、って思う。言語の習得って死ぬほど積み重ねだから僕は大嫌いだけど。

 

 そんなこんなで時計は15時を回り、なんとなく絶望的な気分になる。まだ布団からでていないなァ。違法アップロードでアニメ見ちゃったなァ。中途半端な道徳心があると苦労する。いっそ完全な卑劣漢になってしまえばいいのか。でも人間はそういう極端な存在になれない事を僕は知っている。

 正義でも悪でもないし、男でも女でもないし、嘘でも本当でもないし。人間の営みはそんなことばっかり。でも難儀な事に、人はハッキリした記号が無いと不安になってしまう生き物なので、無理矢理ラベルを貼ろうとしてる。よく、自己肯定が低い人が「自分が発達障害じゃなかったら、ただの怠け者になってしまうから病院に行くのが怖い」という話をする。「いや、それはまだ現代医学ではラベル貼り出来てない病気かもしんないよ」って、僕は思うのだけれど。多分、ラベルが無いと自分が自分に言い訳できないし、他人も病名というラベルが無いから「怠け者」のラベルをその人に貼ろうとするんだろうな、って思う。「別にいーじゃん。君が今苦しいのは事実なんだし」って言ってあげたい。

 ラベルが完全に消滅した世界も、それはそれで困るんだけどさ。福祉をどう分配したらいいのか分かんないし。国民全員を障害者料金とかでサポートはしてあげられないだろう。じゃあ資源が無限にあったらどうだろう。ラベルが無くても生きていけるのかな。いやでも本質的に人間は名前を付けたがる生き物だから、やっぱりラベルが無いと生きていけないのかな。

最近そういう事を、なんとなく考えてる。