キィの日記

趣味のお話とか

2017面白かった本5選

 書こう書こうと思っていたらいつの間にか年が明けてました。

 あくまで「僕が2017年に読んだ本」であって2017年に出版された本ではないのであしからず。

 

 

超人計画/滝本竜彦

 『NHKにようこそ!』を出版した後、スランプに陥った頃の滝本竜彦先生が書いたエッセイ。

 この作者にして佐藤達広(『NHKにようこそ!』の主人公。引きこもりのクズ。)あり!という期待を裏切らない内容。本書執筆当時の滝本先生の姿のみならず過去の滝本先生についてもページを割いていて面白い。

 昔のクラスメイト(女の子)(非オタ)と一人暮らしの自分の部屋で二人きりになるも、エヴァ知識を喜々として披露してドン引きされた上に、その後エッチな雰囲気になってもインポで童貞卒業出来ず……。みたいな限界エピソードが所狭しと並んでいる。

 そして最も特筆すべきはこれらのエピソードを全て脳内彼女のレイちゃん(当然、モデルは滝本先生の大好きなエヴァのキャラクター)と一緒に語るという体をとって書いている事である。限界オタクここに極まれりである。

 

超人計画 (角川文庫)

超人計画 (角川文庫)

 

 

全滅脳フューチャー!!!/海猫沢めろん

 先日、『キッズファイヤー・ドットコム』で野間文芸新人賞候補になった海猫沢めろん先生の半自伝小説。

 主人公は18歳のめろん先生=「僕」である。

 めろん先生もかなりのオタクなのでこちらも限界エピソードには事欠かないが、滝本先生とはまた違うベクトルの痛々しさを持って読者に迫ってくる。

 本書で描かれている痛々しさはどちらかと言えば思春期の内気な少年特有の痛々しさだ。

 

 いやなことも、楽しいことも、眠ればすべて消える。起きたらすべて忘れている。

 機械であるぼくの頭には、リセット機能がついている。

 リセット。

 感情もぜんぶリセット。

 明日になればちがうぼく。

  外界からの攻撃から身を守る時、全ての感情をシャットダウンするあの感じ。その手の痛々しさがこの物語を満たしている。

 話の中心は「僕」を取り巻く周囲の人達で、ほぼほぼ個人(と脳内彼女)で完結している『超人計画』とは対称的。(エッセイと小説を比べるのも変な話だけど)

 めろん先生も滝本先生も「限界オタクのコミュ障」なのだけどそれぞれベクトルが違うのが面白いですね。

全滅脳フューチャー! ! ! (幻冬舎文庫)
 

 

電気サーカス/唐辺葉介

 ネットで出会った男女が退廃的なルームシェアをする話。これも『全滅脳フューチャー!!!』と同じで半自伝小説。唐辺先生のルームシェアが始まってから崩壊するまでの数年間についての話。

 案の定アングラな連中が集まったルームシェアなので薬物汚染されてたりメンヘラ女が暴れてたりする。

 シェアハウス経験者のphaさん(エッセイとか出版してる人)の話を聞くとここに書かれているシェアハウス事情はかなり的を射ているらしい。

www.webchikuma.jp

 僕も主人公のように基本的に人格が破綻してるので「家から追い出されてたらこういう生活してたな」と思いながら読んでました。

 槇原敬之の『三人』と比べると対極に位置する荒んだルームシェアが面白いです。

 

 

cakes.mu

 

猫の地球儀/秋山瑞人

 これはマジで面白い(ここに挙げた本は全部おもろいけど)。全2巻。

 知能の高い猫が住む宇宙コロニーが舞台。人類は既に滅亡しており、「天使」という伝説上の存在として猫達の間に神話として残っているだけ。

 ほらもうこのあらすじだけでおもろい。宇宙コロニーを支配してる猫ってなんやねん。

 大筋は格闘家の猫と宇宙飛行士の猫のライバル関係がメインです。格闘家の猫と宇宙飛行士の猫ってなんやねん。

 で、作品のテーマは「科学や学問の原罪」。

 意味わかんないでしょ。

 でもこれらの要素全部ちゃんと整理して着地してます。すごいです。

 今やってる仮面ライダー仮面ライダービルド』も「科学の罪」を取り扱っているのでついつい比較しちゃいますね。というかこの先この手のテーマを扱う作品を鑑賞する時絶対コレと比較しちゃうと思います。それぐらいやばかったです。秋山先生とこの企画通した電撃に感謝。

 

 

 

猫の地球儀〈その2〉幽の章 (電撃文庫)

猫の地球儀〈その2〉幽の章 (電撃文庫)

 

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない/桜庭一樹

 中学生の頃に初めて読んだ時はそこまで衝撃を受けた覚えは無いのだけれど、20歳になった2017年に読んだらめっちゃすごかった。当事者の頃は自分が生きるのに必死で物語にまでグロテスクな物を求めてなかったのかもしれない。俯瞰的に見れるようになって初めて気づくことってあるよね。

 兎にも角にも僕はこの本をすごいと思った。中学生のグロテスクだけどキラキラ光ってるアレをこんなに上手く切り取る作家はそういない。『リリィ・シュシュのすべて』を見た時も似たような感想を抱いた記憶があります。

 いやまじ良かったです。個人的に富士ミス版の表紙がお気に入り。

 

 

 

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

 

 

2015年から去年の夏までずっと活字スランプでニートだったにも関わらず2年間一冊も読破できた本が無かったから去年はいっぱい読めて嬉しかった。