キィの日記

趣味のお話とか

『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』を読んで欲しいッ!

ラノベ作家から直木賞作家にまで出世(?)した桜庭一樹の『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』を読み終わった。

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富士ミス時代の表紙

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角川文庫版の表紙

 

かっこつけてんじゃねーぞ!!!!!!!!!!

元 は ラ ノ ベ

あらすじ

早く大人になりたい女子中学生・山田なぎさ。そんな彼女のクラスにある日突然やってきたヤベー電波女・海野藻屑。

藻屑は転向後最初の自己紹介で「ぼくはですね、人魚なんです」とハルヒばりの電波自己紹介をするヤベーやつ。リアリストのなぎさとは水と油の存在。ところが、なぎさは藻屑に懐かれてしまい…。

これからあたし、どうなっちゃうのー!?

 

 海野藻屑のライトノベル的キャラ付けが必然性を持っているのがすごい

「自己紹介で奇天烈な事を言って周りにドン引きされるヤベー電波女」という設定を活かすのは結構難しい。なぜならそれ自体で「目立つヤベーキャラクターにする」という目的が達成されてしまうからだ。

野獣先輩は脈絡もなく脱糞するが、そこに必然性は無い。MAD作者の気まぐれで脱糞させられる。ウンコするだけで面白いから。

だが海野藻屑は桜庭一樹の気まぐれで自分を人魚だと言いはっている訳ではない。それらライトノベル的な電波女設定は物語の核心と密接に結びついている。

これは読んでいてすごい気持ちがいい。

読み始めた時に「痛い設定だな~これから大丈夫かよ~」と思っていても、後半、海野藻屑が賢しい子どもであることが分かってくると「あーはいはいそういうことね完全に理解した」と痛々しい電波女設定がすんなり受け入れられるのである。

だからこの作品は、ライトノベルだからこそ出来た作品であるから、普通の装丁にしてカッコつけないでほしいのだ。(乙一がどこかで「ライトノベルのままでは手にとってもらえない客層がいるという事実を覆せなかったという点では、ある種の敗北である」と漏らしていたけれど、やはり切ない)

ちゃんと主人公・山田なぎさの成長物語として成立している

「海野藻屑がバラバラ死体で発見された」という旨の新聞記事からスタートする本作は、レーベルも相まってミステリやサスペンスを期待されやすい。が、本作の本質はそういう部分ではない。スティーブン・キングスタンド・バイ・ミーのそれに近い、大人になれた子供と、大人になれなかった子供の物語である

痛々しい青春小説が好きならとにかく読んでくれッ!

ライ麦でも、スタンド・バイ・ミーでも、そういうのが好きならとにかく読めッ!

薄っぺらいから三時間ちょいで読み終わるし角川文庫の表紙なら人前でも読めるッ!

とにかく読めッ!